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ウェブサイトの引越し時の注意点は?サイト運営者必見のチェックリスト

最終更新日:2024年11月8日 執筆:SEOコンサルタント 鈴木将司

ウェブサイトを運営していると、サーバーの変更や移転が必要になることがあります。理由として、現在のサーバーのスペックが時代遅れになり、最新のシステムやソフトウェアに対応できなくなる場合や、サーバー自体にトラブルが発生したときが考えられます。サーバーを変更することは一見簡単そうに見えますが、実際には多くの手順を踏まえた慎重な対応が必要です。わずかなミスでも、ウェブサイトが見れなくなったり、システムが動作しなくなったりする可能性があります。そこで今回は、ウェブサイト運営者に向けて、サイトの引越し時に気を付けるべきポイントをまとめたチェックリストを紹介します。

① ダウンタイムの最小化


「ダウンタイム」とは、ウェブサイトやサービスが一時的に利用できなくなる時間のことを指します。サーバーの移転作業を行うと、どうしても短期間ではありますが、ウェブサイトがユーザーにアクセスできなくなる時間が発生します。特に、オンラインストアや予約システムを運営している場合、ダウンタイムが発生することで売上の損失やお客様の信頼を失うリスクが高まります。そのため、ダウンタイムを最小限に抑えるための準備が必要です。

具体的な対策としては、移転作業を行う時間を工夫することが挙げられます。ウェブサイトへのアクセスが少ない時間帯、たとえば深夜や早朝に作業を行うことで、多くのユーザーに影響が出ないようにすることが可能です。また、予めすべての準備を完了させ、実際の移転作業にかかる時間を短縮することで、ダウンタイムをできる限り抑えることができます。さらに、移転作業中に「メンテナンス中」の画面を表示することで、ユーザーに不安を与えず、また後からの再訪を促すことができるでしょう。

② データのバックアップ


サーバー移転の最も重要なステップの一つが、ウェブサイトのすべてのデータを事前にバックアップすることです。バックアップを取ることで、万が一移転作業中にトラブルが発生した場合でも、元の状態に復元することができます。特に、ウェブサイトには多くの画像、文章、そしてデータベースが含まれており、これらが失われるとビジネスに甚大な影響を与える可能性があります。

ウェブサイトデータのバックアップ方法は、通常2種類あります。一つは、サーバーのファイルシステム全体をコピーする方法です。もう一つは、データベースのバックアップを行う方法です。データベースには、ウェブサイトの投稿内容、ユーザー情報、注文履歴など重要な情報が含まれているため、これを最新の状態で保存しておくことが不可欠です。また、可能であれば、バックアップを複数の場所に保存することが推奨されます。例えば、クラウドストレージや外部ハードディスクなどに保存しておくと、万一の障害時にも安心です。

③ セキュリティ


サーバー移転時に忘れてはいけないのがセキュリティ対策です。新しいサーバーに移転する際、そのサーバーがどのようなセキュリティ対策を講じているかを確認しなければなりません。特に、ウェブサイトがユーザーの個人情報やクレジットカード情報を扱う場合、不適切なセキュリティ設定が行われていると、データ漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。

まず確認するべきは、SSL証明書が正しく設定されているかどうかです。SSL証明書がない場合、ウェブサイトのURLは「http://」の形式になりますが、これではデータが暗号化されずに送受信されるため、セキュリティの脆弱性が生じます。これを防ぐために、「https://」と表示されるようにSSL証明書をインストールし、通信が暗号化されるようにしましょう。また、サーバー自体のファイアウォールやアクセス制限の設定も確認し、不正アクセスを防止する対策が講じられているかをチェックすることが重要です。

④ サーバーサイドプログラムの再設定


サーバー移転の際には、ウェブサイトで使用しているプログラムが新しいサーバー環境でも正しく動作するかどうかを確認する必要があります。特に、PHPやPythonといったサーバーサイドプログラムや、MySQLやPostgreSQLなどのデータベースに依存するサイトの場合、バージョンや設定の違いにより、プログラムが動作しないことがあります。

例えば、PHPのバージョンが古いサーバーから新しいサーバーに移行する際、使用していたコードが動作しない場合があります。これにより、ウェブサイトの一部機能が利用できなくなる可能性があります。移転前に新しいサーバーでテストを行い、必要に応じてプログラムのアップデートや設定変更を行うことが不可欠です。移行後にプログラムが動作しない場合に備えて、移行前にそのバックアップも準備しておくと安心です。

⑤ WordPressなどのCMSの再設定


WordPressなどのコンテンツ管理システム(CMS)を利用している場合、新しいサーバーに移転すると動作に問題が発生することがあります。CMSは通常、PHPやMySQLを使用して動作しているため、これらのソフトウェアのバージョンや設定が異なると、サイトの表示に不具合が生じる可能性があります。

WordPressの場合、特にテーマやプラグインに依存している場合、これらが新しいサーバー環境で動作するかを事前に確認する必要があります。テーマやプラグインが古いバージョンであったり、サポートされていない機能を使用していると、移転後にサイトが正常に表示されないことがあります。また、WordPress本体やプラグイン、テーマのアップデートが必要な場合には、移転前に最新の状態に更新しておくことが推奨されます。

⑥ データベースの再設定


ウェブサイトのコンテンツやユーザー情報は、ほとんどの場合データベースに保存されています。サーバー移転時には、このデータベースを新しいサーバーに移行する必要があります。特に、WordPressや他のCMSを使用している場合、データベースには投稿記事やユーザー情報、サイトの設定データが含まれており、移転作業が失敗するとウェブサイトが正常に表示されなくなる恐れがあります。

移転前に、データベースの完全なバックアップを取ることが重要です。そして、新しいサーバーに移行した後、そのデータが正しくインポートされているかを確認します。場合によっては、データベースの構造や設定を新しいサーバーに合わせて調整する必要があることもあります。特に、文字コード設定やデータベースエンジンの違いが影響を与えることがあるため、これらを確認しながら移行作業を進めましょう。

⑦ ドメインネームサーバーの更新


サーバー移転後には、ドメインネームサーバー(DNS)の設定を新しいサーバーに向けて更新する必要があります。DNSは、ウェブサイトのドメイン名とサーバーのIPアドレスを紐付けるシステムで、これを更新することで、ユーザーが新しいサーバー上のウェブサイトにアクセスできるようになります。

ただし、DNSの変更には24〜48時間程度の時間がかかることが多く、その間一部のユーザーは旧サーバー上のサイトにアクセスする可能性があります。このため、旧サーバーのサイトをすぐに削除せず、DNSが完全に更新されるまで一定期間両方のサーバーを稼働させることが推奨されます。また、DNSの設定ミスにより、ユーザーが正しくサイトにアクセスできなくなるリスクがあるため、慎重に設定を行いましょう。

⑧ ウェブサイトの機能とパフォーマンスのテスト


サーバー移転後は、必ずウェブサイトの機能とパフォーマンスを確認する必要があります。これは、サイトの全体的な動作確認を行う作業であり、ページの表示速度、リンクの正常性、フォームの動作などを確認します。特に、オンラインストアなどであれば、注文システムが正常に動作しているか、支払い処理がスムーズに行えるかをチェックすることが大切です。

また、パフォーマンステストも重要です。新しいサーバーが旧サーバーと同等、もしくはそれ以上のパフォーマンスを提供しているかを確認し、ページの読み込み速度が遅くなっていないか、サーバーのレスポンスが適切かを測定しましょう。もしパフォーマンスに問題がある場合は、サーバー設定の見直しや、キャッシュ設定の最適化を検討する必要があります。

⑨ SEOへの影響


サーバーの移転がSEO(検索エンジン最適化)に影響を与えることがあります。移転に伴い、ウェブページのURLが変更された場合、古いURLから新しいURLにリダイレクトを設定しなければ、検索エンジンにインデックスされているページが無効になり、検索結果から消えてしまうことがあります。

301リダイレクトを正確に設定することで、旧URLから新URLへのスムーズな遷移を保証し、SEOへの影響を最小限に抑えることができます。また、Googleサーチコンソールを使用して、サイト移転の通知を行うことで、Googleに対しても新しいサイトが正しく設定されたことを伝えることが重要です。移転後も定期的にSEOパフォーマンスを確認し、検索順位に悪影響が出ていないかをチェックしましょう。

⑩ メールアドレスの再設定


サーバー移転に伴い、メールアドレスの設定も見直す必要があります。多くのウェブホスティングサービスは、ウェブサイトのホスティングと同時にメールホスティングも提供しており、移転先のサーバーで同じ機能が提供されているかを確認することが重要です。

特にビジネス用メールアドレスを使用している場合、メールの送受信に問題が発生すると顧客対応に支障をきたすことがあります。移転前にメールのバックアップを取り、MXレコード(メール交換レコード)を新しいサーバーに向けて更新する必要があります。MXレコードの更新が正しく行われていないと、メールが正しいサーバーに届かなくなり、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重に設定を行いましょう。

まとめ

ウェブサイトの引越しは、サイトの安定運営を維持するために必要な作業ですが、その過程で多くのリスクが伴います。ダウンタイムを最小限に抑え、データのバックアップを確実に行い、セキュリティやプログラムの再設定など、細かな点まで注意を払うことが大切です。また、移転後もウェブサイトの機能をしっかりテストし、SEOへの影響を最小限に抑えるための対策を講じましょう。サイトの移転が無事に完了したら、引き続き安定した運営を目指し、定期的なチェックを行うことをお勧めします。

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