ウェブサイトを作っただけでは大草原の中に1軒のお店があるのと同じ状況でしかありません。つまり、自分達以外に自分のお店の存在を知っている人が全くいないという状態です。
こうした状態を少しでも早く脱するためには「ウェブマーケティング」を実施する必要があります。
目次
ウェブマーケティングとは?
「ウェブマーケティング」とは、オンラインショップなどのウェブサイト、ウェブサービスに対して、より多くの見込み客を集客し、サイト上で展開している商品・サービスの購入や、長期的な関係構築を促す活動のことを意味します。
ウェブマーケティングを実施するには次の7つのステップを踏みます。
【STEP 1】 ウェブマーケティングのゴール設定
【STEP 2】 カスタマージャーニーマップの作成
【STEP 3】 ウェブマーケティング施策の選定
【STEP 4】 KPIの設定
【STEP 5】 施策の実施
【STEP 6】 分析
【STEP 7】 課題の発見と改善
【STEP 1】 ウェブマーケティングのゴール設定
サイトを立ち上げた後に、サイトからの売上を増やすために設定するのが「ウェブマーケティングのゴール」です。
ウェブマーケティングをすることにより達成するゴールは「KGI」とも呼ばれます。「KGI」とは、Key Goal Indicatorの略で、「重要目標達成指標」と呼ばれるものです。いわゆる最終的なゴールであり、特定期間に「何」を「どの程度」達成するのかを数値で表すものです。
業種 | ウェブマーケティングのゴール(KGI)の具体例 |
---|---|
小売業 | ・ECサイト(通販サイト)での来年度の売上を150億円達成する ・実店舗へ送客することにより来年度の実店舗の売上を30億円達成する |
製造業 | ・来年度の資料請求件数を50件以上獲得する ・求人の問い合わせ件数を月平均10件以上獲得する |
法律事務所 | ・電話、またはフォームによる無料相談を月平均200件以上獲得する |
経営コンサルタント | ・新規の顧問契約を毎月30件以上達成する ・毎回100名以上の無料セミナーの申込みを獲得する |
ウェブ制作会社 | ・毎月の新規客獲得件数10社を達成する |
歯科医院 | ・月平均の新患を80人以上にする ・毎月10名以上のインプラント治療の患者を獲得する |
整体院 | ・平均月商200万円を達成する |
美容院 | ・月平均の予約件数300件を達成する |
飲食店 | ・公式サイトからの月平均予約件数を40件以上達成する |
修理業 | ・月平均のiPhone修理の依頼件数を200件以上達成する ・月平均のiPad修理の依頼件数を40件以上達成する |
工務店 | ・モデルハウスへの来客数を月平均40件以上獲得する ・リフォームの受注件数を月平均10件以上獲得する |
不動産会社 | ・マンションとアパートの仲介料を年間5,000万円以上達成する |
ウェブマーケティングのKGI(Key Goal Indicator)は、企業のビジネス目標や戦略に関連する重要な指標です。多くの場合、ウェブマーケティングのKGIは、ウェブマーケティングを実施することにより達成される売上高や新規顧客獲得数になります。
売上高や新規顧客獲得数以外のKGIとしては次のようなものもあります。
① ブランド認知度
ウェブマーケティング活動がブランド認知度向上を目指す場合、アンケートや調査を通じて得られるブランド認知度の変化をKGIとして設定します。
② 利益率
ウェブマーケティング活動のコスト対効果を評価するために、利益率をKGIとして使用することがあります。
③ 顧客維持率
顧客ロイヤリティを高めることが目標であれば、顧客維持率(リピート顧客の割合)をKGIとして使用します。
KGIは、企業や業界、目標に応じて異なります。そのため、ウェブマーケティング活動を計画・実施する際には、ビジネス目標や戦略に最も関連するKGIを選択し、定期的に評価・最適化することが重要です。
【STEP 2】 カスタマージャーニーマップの作成
ウェブマーケティングのゴールを設定した後は、見込み客に対してどのタイミングでどのような働きかけをするのかを決めます。
「見込み客」と一口で言っても、多種多様な人達がいます。そのため、自社の商品・サービスを購入してもらうためにそれぞれの人達に同じ働きかけをしても大きな効果は出ません。
多種多様な人達それぞれの心理状態を予測して、その心理状態にあった働きかけをするために役立つのが「カスタマージャーニー」というフレームワークです。
フレームワークとはビジネスの課題を解消したいときに役立つ思考の枠組みのことを言います。
「カスタマージャーニー」(Customer Journey)とは「バイヤージャーニー」(Buyer Journey)とも呼ばれるもので、多種多様な見込み客が商品・サービスの購入を検討する段階から購入をするまでの過程を時間軸で捉え、それぞれの見込み客が心理的にどのような状態にあるのかを予想し、それぞれのプロセスにいる見込み客にどのようなウェブマーケティングの施策を実施すれば良いのかを考えるためのフレームワークです。
カスタマーは「顧客」、ジャーニーとは「旅」という意味ですので、顧客が商品やサービスを購入するまでに辿るプロセスを旅に例えているものです。
カスタマージャーニーには様々なパターンがありますが、基本的には次の5つのステージからなります。
① 課題認識
商品やサービスの必要性を認識する段階です。広告、口コミ、検索エンジンなどでの情報収集が行われます。
② 興味
商品やサービスに興味を持つ段階。ウェブサイトやSNS、メールマガジンなどでの情報収集が行われます。
③ 比較検討
複数の商品やサービスを見つけて、それらの詳細を見て比較検討する段階です。レビューの閲覧や、問い合わせなどが行われます。
④ 購入
商品やサービスを購入する段階です。購入手続きを行い、支払いが完了し、商品・サービスの提供が実行されます。
⑤ リピート
商品やサービスに満足した顧客が再度購入する段階です。アフターサポートやリピート特典などで、ユーザーの継続的な購買を促します。
カスタマージャーニーを設定することで、ユーザーがどのようなプロセスで商品やサービスに接しているのかを把握し、そのプロセスに合わせたウェブマーケティング施策を実施しやすくなります。
カスタマージャーニーは、「カスタマージャーニーマップ」という図を作り表現します。
カスタマージャーニーマップの1番上にはユーザーが位置する「段階」を記載します。
カスタマージャーニーマップは1つの種類しかないというわけではなく、業種や商品・サービスによって様々なものがあります。
特に、消費者に商品・サービスを販売するB2Cと法人に商品・サービスを販売するB2Bではカスタマージャーニーマップの形態は異なります。
また、各段階の名称も企業や人によって呼び方が異なります。例えば、「課題認識」を「認知」と呼ぶことがあったり、「興味」を「情報収集」と呼ぶことがあります。自社にとって最もわかりやすく、イメージがしやすい呼び方を使いましょう。
[ユーザーの意識・感情] カスタマージャーニーマップの2番目の層にはそれぞれの時点でユーザーが抱く意識・感情を書きます。ユーザーの心の中のつぶやきを「」で囲う形式を使うと書きやすくなります。
《B2Cのカスタマージャーニーマップの例》
《B2Bのカスタマージャーニーマップの例》
[ユーザー行動]
3番目の層にはそれぞれの時点のユーザーが抱く意識・感情によってどのような行動を起こすのかを書きます。
《B2Cのカスタマージャーニーマップの例》
《B2Bのカスタマージャーニーマップの例》
[タッチポイント]
タッチポイントとは企業やブランドが顧客に何らかの影響を及ぼすあらゆる情報接点のことです。4番目の層のタッチポイントにはそれぞれの時点のユーザーにどのような手段で接触できそうかを書きます。
《B2Cのカスタマージャーニーマップの例》
《B2Bのカスタマージャーニーマップの例》
[マーケティング施策]
5番目の層には各タッチポイントで自社がどのようなマーケティング施策を実施するとユーザーが行動してくれそうかを書きます。
1つの施策が終わったら次の施策をするというのではゴールを達成する時間が長くなってしまいます。カスタマージャーニーマップ上の各段階には限られた時間の中で同時に複数の施策が打てるようになるべくたくさんのマーケティング施策を記入しましょう。
マーケティング施策には、SNSやSEO、オンライン広告というようなウェブ上でのオンライン施策だけでなく、セミナー会場を借りて開催するリアルのセミナーや、展示会への出展、紙を使ったダイレクトメールの郵送などオフラインで実施するものも含めるとたくさんの打ち手が考案できます。
《B2Cのカスタマージャーニーマップの例》
《B2Bのカスタマージャーニーマップの例》
自由に項目を記入できるカスタマージャーニーマップのテンプレートを作ってみました。想像力を働かせて、見込み客の視点に立ち、自社の商品・サービスを購入してくれてリピート購入をしてもらうまでのカスタマージャーニーマップを作成してみてください。
《B2Cのカスタマージャーニーマップのテンプレート》
《B2Bのカスタマージャーニーマップのテンプレート》
カスタマージャーニーマップを作成する際には「ペルソナ」を設定するとより明確になり、チーム内で共通の認識を持つことが可能になります。
ペルソナとは、自社の商品・サービスのターゲットユーザーを詳細化して、架空のユーザー像に置き換えた人物像のことです。
ターゲットユーザーは、「首都圏在住の20代女性会社員」というように実際に存在する人々の特徴ですが、ペルソナは架空の人物像です。
ペルソナは架空の人物像ですが、適当に設定すると説得力の無い人物像になってしまうことがあります。説得力のあるペルソナを設定するには極力、実際にユーザーになりそうな人にインタビューをするか、アンケートに答えてもらう情報収集をすることがベストです。それが出来ない場合は、実際にユーザーになりそうな人を知っている人にその人物の属性を聞き出しそれらを参考にして作成すると現実的なものになります。
《B2Cサイトのターゲットユーザーの例》
首都圏在住の20代女性会社員
《B2Cサイトのペルソナの例》
ペルソナの設定は、B2C(消費者向け)、D2C(メーカーから消費者への直販)、B2E(社員向け)のように個人を対象にしたウェブサイトを制作する際に設定します。
また、B2B(企業向け)、B2G(政府・自治体向け)のような法人を対象にする場合は、それらの組織での購買担当者や経営者のペルソナを設定することが一般的です。
《B2Bサイトのターゲットユーザーの例》
全国の中小規模の製造業
《B2Bサイトの経営者のペルソナの例》
【STEP 3】 ウェブマーケティング施策の選定
カスタマージャーニーマップを作成した後は、カスタマージャーニーマップ上のどのプロセスでどのウェブマーケティング施策を実施するかを決めます。
カスタマージャーニーマップでは、ウェブを使って実施するオンライン施策だけではなく、オフラインのマーケティング施策を記入しましたが、ここではオンラインで実施するウェブマーケティングの施策を決めます。
ウェブマーケティングの施策には次のものがあります。
① SEO
② SNS運用
③ 動画投稿
④ リスティング広告
⑤ SNS広告
⑥ 動画広告
⑦ アドネットワーク広告
⑧ リターゲティング広告
⑨ アフィリエイト広告
⑩ 電子メール
① SEO
SEOとはSearch Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略で、GoogleやYahoo!JAPAN等のウェブ検索エンジンで自分のサイトを検索の上位に表示するための対策のことです。
SEOを自社が運営するサイトやブログに実施することにより、検索エンジンを使うユーザーに自社の商品・サービスの存在を知ってもらえるようになります。
② SNS運用
SNS運用とは、Twitter、Instagram、Facebook、LINE、PinterestなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使って企業が情報発信をする活動のことです。見込み客が知りたそうな商品やサービスの紹介、活用方法や、疑問や悩みを解決するための無料お役立ち情報を発信することによりSNSユーザーに自社の存在、商品・サービスの認知をしてもらうことが可能になります。
③ 動画投稿
動画投稿とは、YouTube、TikTok、ニコニコ動画などの動画共有サイトに商品・サービスの紹介動画や無料お役立ち情報を投稿する活動です。動画をネットで見ることは近年日常生活の一部になってきているためより広い層に自社の存在、商品・サービスを認知してもらえるようになります。
④ リスティング広告
リスティング広告は検索連動型広告とも言われ、検索エンジンでユーザーが検索したキーワードに関連する内容の広告を検索結果画面に表示する広告のことです。
通常、検索結果画面の一番上と一番下に表示されますが、最も目立つ部分である一番上に表示されるためユーザーの目に触れる機会が最も多いので、大きな集客効果が望める広告です。
⑤ SNS広告
SNS広告とは、Twitter、Instagram、Facebook、LINE、PinterestなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のユーザーに配信する広告のことです。 SNS広告はユーザーがSNSに登録したときの個人情報や、その後の行動履歴を基にした細やかなターゲティング設定ができる広告です。
⑥ 動画広告
動画広告とは、動画を活用した広告のことで主にYouTube等の動画共有サイト上でユーザーが動画を再生した時に配信される広告のことです。
⑦ アドネットワーク広告
アドネットワーク広告とは、広告を出稿できる多数のWebサイトやアプリ、SNSを集めた広告配信ネットワークに同時に出稿できるオンライン広告です。日本国内で利用されているアドネットワークの代表的なものとしては、Googleが提供するGoogleディスプレイネットワークがあります。
⑧ リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、1回以上サイトに訪れたことのあるユーザーを追跡して広告を配信することができる広告手法のことです。例えば、ある通販サイトを1回見た後にそのサイトの広告を別のサイトを訪問した時に目にするというものです。
⑨ アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは、ユーザーが広告をクリックし、広告主のサイトで商品購入、会員登録などの成果が発生した際、その成果に対して報酬を支払う成果報酬型の広告です。
アフィリエイト広告を掲載できるメディアには、大手マスメディアのサイトや、比較サイト、個人のアフィリエイターのブログ、そしてInstagram、Twitter等のSNSなどがあります。
アフィリエイト広告はリスティング広告とは違い、単にユーザーが広告をクリックだけで料金が発生するものではなく、商品購入、会員登録などの成果が発生した場合にだけ料金が発生するため企業にとって費用対効果が高い広告です。
⑩ メール
電子メールを使ったウェブマーケティング施策としてはメールマガジンとステップメールがあります。
(1)メールマガジン
メールマガジンとは、発信者が複数の読者へ一斉に情報を発信するメールのことです。
過去にウェブサイト上で商品・サービスを申し込んだ顧客にだけ配信する「顧客向けメールマガジン」、過去にウェブサイト上で無料サービスを申し込んだ顧客にだけ配信する「無料ユーザー向けメールマガジン」、メールマガジンそのものに情報としての価値が高いコンテンツが掲載されている「購読希望者向けメールマガジン」などがあります。
(2)ステップメール
ステップメールとは、見込み客や既存客に定期的に自動配信する電子メールのことをいいます。
ステップメールは、ウェブサイト上で資料請求をしてきた見込み客や過去に商品・サービスを購入した顧客、無料PDF資料をダウンロードした無料ユーザー、無料セミナーや無料イベントに参加した無料ユーザー達を対象に配信されます。
自動送信される電子メールの内容は、購買者に対しては、購入のお礼や商品の活用法の紹介、新商品や関連商品の情報を、無料ユーザーに対しては商品・サービスの紹介、セミナー形式の連続講座などがあります。
【STEP 4】 KPIの設定
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」と呼ばれる経営指標です。
KPIは「中間目標」を意味し、ゴールに向かうプロセスの目標数値です。つまり、現時点からゴールへ到達するために、通過すべきポイントと言えるものです。 【STEP 1】 で設定した最終目標であるKGIを達成するために、どの時点でどこまで進んでおくべきなのか、その中間点がKPI指標となります。
《KPIとKGIの関係》
通常、KGIとKPIは一緒に設定します。例えば「来年度のサイトからの売上を30億円達成する」というKGIを設定したとします。
そしてこのKGIを達成するために新規客を毎月2,000人獲得する」、それを実現するために「見込み客に役立つ無料お役立ちページを毎月15ページ新規作成して検索エンジンからのサイト訪問者数を毎月400,000人獲得する」、「Instagramで見込み客に役立つ無料お役立ちコンテンツを毎月12回投稿してフォロワー数を月平均500人獲得する」・・・というように逆算して計画を立てます。
《ECサイトを運営する企業の2024年度のKGIとKPIの例》
このように各施策により具体的にいくらの売上を達成するのかを定め、それを実現するにはどのような取り組みをするのかを計画することにより、KGIとして設定した数値目標を達成する可能性が高まります。
自社の実情に沿った現実的なKGIと、それを実現するためのKPIを設定しましょう。
《KGIとKPIのテンプレート》
【STEP 5】 施策の実施
計画したウェブマーケティングの施策を1つ1つ実施します。
【STEP 6】 分析
実施した施策の結果を分析ツールを使って分析します。
サイトへの訪問者数や成約件数、成約率等はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使うと見ることができます。
《Googleアナリティクスの例》
ソーシャルメディアのデータは各ソーシャルメディアを提供している企業が提供しています。
《Facebookの分析ツールの例》
《YouTubeの分析ツールの例》
また、広告に関しても広告代理店各社がそれぞれ分析ツールをクライアントに提供しています。
《Google広告の分析ツールの例》
【STEP 7】 課題の発見と改善
各社が提供する分析ツールに基づいて施策の問題点を発見し、改善のための手がかりとして活用します。
無計画にウェブマーケティングを始めるのではなく、ウェブマーケティングの7つのステップを踏むことにより、企業サイトのマーケティングゴールであるKGIの達成を目指します。それが遠回りのように感じるかもしれませんが、成功までの近道になるのです。