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特定商取引法とは?その意味とよくあるトラブル

最終更新日:2024年7月7日 監修:弁護士 吉田泰郎

商品・サービスをオンラインで販売する場合、「特定商取引法に基づく表記」をサイト上に記載する義務があります。販売価格、送料、返品条件など、消費者に対する重要な情報を明示する必要があります。

特定商取引法の意味

特定商取引法(特定商取引に関する法律)は、消費者を保護するために設けられた法律です。主に、訪問販売や通信販売、電話勧誘販売など、特定の取引形態における業者と消費者の間の取引を規制することを目的としています。

特定商取引法は、消費者保護を目的とし、事業者が販売者として行う商取引全般に適用されます。特に、ウェブサイトで商品・サービスを販売する際には、以下の表示義務があります。

① 販売価格

商品・サービスの価格は明確に表示する必要があります。また、消費税を含む価格(総額表示)で表示しなければなりません。

② 送料

商品を購入者に届ける際の送料も明示する必要があります。送料が別途必要な場合や無料の場合、その情報を消費者に提供することが必要です。

③ 返品条件

商品の返品や交換についての条件を明示する必要があります。また、消費者が返品や交換を希望する場合の手続き方法も示す必要があります。

④ 商品の内容

商品の名称、型番、材質、生産国、製造者等、商品の主要な内容を正確に表示する必要があります。

⑤ 事業者の特定

事業者の名称(事業者名または屋号)、住所、連絡先(電話番号やメールアドレスなど)を明示する必要があります。

⑥ 支払い方法と時期

支払い方法(クレジットカード、銀行振込、代金引換など)と支払いのタイミング、また商品の提供時期も表示する必要があります。

これらの表示義務は、消費者が商品・サービスを購入する際に必要な情報を十分に得られることを保証し、消費者の利益を守るために設けられています。これらの情報を不適切に、または不十分に表示した場合、行政処分や罰則が科される可能性があります。

よくあるトラブル

特定商取引法に関連するトラブルとしては、以下のようなケースが考えられます。

① 不適切な表示

表示義務に違反して、価格、送料、返品条件など必要な情報を適切に表示していないケースがあります。消費者が十分な情報を得られない状況は、その後のトラブルの原因となり得ます。

《具体例》
具体例1: 価格の不適切な表示

【状況】
Hさんはオンラインショップで洋服を購入しました。商品ページには「50%オフ!」と大きく表示されており、割引後の価格が目立つように記載されていました。しかし、実際の価格はページ下部の小さな文字でしか確認できませんでした。

【問題点】
購入手続きを進めると、最終確認画面で元の価格が表示され、そのままの価格で請求されることに気付きました。Hさんは割引後の価格だと思っていたため、混乱し不満を持ちました。

【結果】
Hさんはすぐに注文をキャンセルしようとしましたが、キャンセル手続きが面倒で時間がかかりました。この経験により、Hさんはそのオンラインショップを二度と利用しないと決めました。

具体例2: 送料の不適切な表示

【状況】
Iさんはオンラインショップで複数の商品を購入しました。各商品のページには「送料無料」と記載されていましたが、実際にカートに商品を追加し購入手続きを進めると、合計金額に高額な送料が追加されていました。

【問題点】
Iさんは「送料無料」の表示を信じて購入を決めたため、追加の送料に驚きました。ショップに問い合わせたところ、「特定の地域や一定額未満の注文には送料がかかる」との説明がありましたが、その情報は商品ページには明示されていませんでした。

【結果】
Iさんは不信感を抱き、注文をキャンセルしました。また、家族や友人にもそのショップの利用を避けるように勧めました。

具体例3: 返品条件の不適切な表示

【状況】
Jさんはインテリア雑貨をオンラインショップで購入しました。商品ページには「返品可能」と記載されていましたが、具体的な返品条件や手続き方法については記載がありませんでした。

【問題点】
商品が届いた後、思っていたものと異なるため返品を希望しましたが、ショップのカスタマーサポートに連絡しても詳細な手続きが明示されておらず、返品が受け付けられないと言われました。

【結果】
Jさんは返品できないことに大きな不満を抱き、そのショップへの信頼を失いました。SNSでその経験をシェアし、多くの人にそのショップを避けるように警告しました。

これらの具体例からわかるように、不適切な表示は消費者にとって大きな不便と混乱をもたらし、トラブルの原因となります。価格、送料、返品条件などの重要な情報を適切に表示することは、消費者の信頼を得るために不可欠です。事業者は特定商取引法を遵守し、正確でわかりやすい情報を提供することで、消費者との信頼関係を築き、長期的なビジネスの成功を目指すべきです。

② 誤解を招く表示

商品・サービスの内容、価格、送料などを誤解を招くように表示している場合も問題となります。これには、消費者が誤解する可能性のある曖昧な表現を使用しているケースも含まれます。

《具体例》
具体例1: 商品内容の誤解を招く表示

【状況】
Lさんはオンラインショップで「本革製バッグ」を購入しました。商品ページには「本革使用」と大きく表示されていましたが、実際の商品説明の詳細には「本革風合成皮革」と小さく記載されていました。

【問題点】
Lさんは商品が本革製だと思って購入しましたが、届いた商品は合成皮革でした。これにより、Lさんは自分が騙されたと感じ、大きな不満を抱きました。

【結果】
Lさんはショップにクレームを入れましたが、ショップ側は説明が記載されていると主張。最終的に返品できましたが、Lさんはこの経験からそのショップへの信頼を完全に失いました。

具体例2: 価格の誤解を招く表示

【状況】
Mさんはオンラインショップで新しいテレビを購入しようとしました。商品ページには「50%オフ!」と大きく表示されており、元の価格と割引後の価格が記載されていました。しかし、元の価格は通常の市場価格よりも非常に高く設定されており、実際の割引率は大幅に誇張されていました。

【問題点】
Mさんは大幅な割引だと思って購入しましたが、後で他のショップと比較して実際にはあまりお得ではないことに気付きました。これにより、Mさんはショップに対して強い不信感を抱きました。

【結果】
Mさんは返品を希望しましたが、割引商品は返品不可との規約があり、対応されませんでした。この経験をSNSでシェアし、他の消費者に注意を呼びかけました。

具体例3: 送料の誤解を招く表示

【状況】
Nさんはオンラインショップで複数の商品を購入しました。商品ページには「送料無料」と表示されていましたが、小さな文字で「特定の条件下では送料が発生する」と記載されていました。

【問題点】
購入手続きを進めると、カート内で高額な送料が追加されていることに気付きました。Nさんは「送料無料」と思い込んでいたため、非常に驚きました。

【結果】
Nさんは注文をキャンセルしましたが、キャンセル手続きに時間がかかり、その間に代替商品を探すのに苦労しました。この経験から、そのショップを利用しないことを決め、友人にもその情報を共有しました。

誤解を招く表示は消費者にとって大きな混乱と不満を引き起こし、トラブルの原因となります。商品やサービスの内容、価格、送料などの情報を正確かつ明確に表示することは、消費者の信頼を得るために不可欠です。事業者は特定商取引法を遵守し、消費者が誤解することのないよう、正確でわかりやすい情報を提供することが重要です。

③ クーリングオフ制度への違反

消費者にクーリングオフ(一定期間内の無条件の契約解除)の権利がある場合には、クーリングオフについて適切に説明しなければなりません。クーリングオフできる場合に、これを拒否すると特定商取引違反となります。

ただし、あらゆる商品・サービスにクーリングオフが適用されるわけではありません。クーリングオフが適用されるのは、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供(エステティック関連、美容医療、語学教育、家庭教師等、学習塾等、パソコン教室等、結婚相談所サービス等に関する取引)、個別信用購入あっせん、宅地建物取引、ゴルフ会員権契約、保険契約、投資顧問契約、連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引等の消費者とのトラブルが起きやすい分野のものです。

通常のネット通販や、営業用に購入したもの等などはクーリングオフの対象にはなりません。しかし、多くの消費者がネットで購入したものもクーリングオフの対象だと思いこんでいますので注意をしなくてはなりません。

《具体例》
具体例1: 訪問販売でのクーリングオフ拒否

【状況】
Pさんは訪問販売で掃除機を購入しました。セールスマンから「この製品は特別価格で提供されるため、クーリングオフはできません」と言われ、契約書にもそのように記載されていました。

【問題点】
Pさんは後になって購入を後悔し、契約書を再度確認したところ、クーリングオフの権利があることに気付きました。クーリングオフの期間内に連絡を試みましたが、セールスマンは「特別価格だから無理です」と再度拒否しました。

【結果】
Pさんは消費者センターに相談し、訪問販売においてクーリングオフが適用されることを確認しました。最終的に、事業者は違反を認めて契約を解除しましたが、Pさんはこの経験から訪問販売に対して強い不信感を抱きました。

具体例2: エステティックサービスでのクーリングオフ拒否

【状況】
Qさんはエステサロンで高額なコース契約をしました。契約時に「クーリングオフ制度については特に説明はありませんでした。数日後、Qさんは契約を解除したいと考え、サロンに連絡しました。

【問題点】
サロン側は「契約書にサインした時点でクーリングオフはできません」と説明し、契約解除を拒否しました。Qさんは契約書を確認しましたが、クーリングオフについての説明はどこにも書かれていませんでした。

【結果】
Qさんは消費者センターに相談し、エステティックサービスもクーリングオフの対象であることを知りました。消費者センターの助けを借りて、最終的に契約を解除できましたが、この経験からQさんはそのサロンを利用しなくなりました。

具体例3: 電話勧誘販売でのクーリングオフ拒否

【状況】
Rさんは電話勧誘で高額な健康食品の定期購入契約をしました。契約後すぐに後悔し、クーリングオフを行おうとしたところ、電話オペレーターは「電話契約にはクーリングオフは適用されません」と主張しました。

【問題点】
Rさんはクーリングオフができると思っていたため、この対応に驚きました。オペレーターは契約解除を拒否し、対応が強硬でした。

【結果】
Rさんは消費者センターに相談し、電話勧誘販売もクーリングオフの対象であることを確認しました。最終的に、消費者センターの介入により契約は解除されましたが、Rさんは電話勧誘に対する不信感を抱くようになりました。

クーリングオフ制度への違反は消費者に大きな不安と不満をもたらします。特定の取引形態においては、クーリングオフについて適切に説明し、消費者の権利を尊重することが重要です。事業者がクーリングオフの権利を無視したり拒否したりすることは、特定商取引法に違反し、行政処分や罰則の対象となる可能性があります。消費者との信頼関係を維持し、長期的なビジネスの成功を確保するためには、クーリングオフ制度を正しく理解し、遵守することが不可欠です。

④ 商品の提供遅延

商品の提供時期について明確な表示をせず、または表示した提供時期を過ぎても商品を提供しないケースもトラブルになる可能性があります。

《具体例》
具体例1: 明確な提供時期の表示がない場合

【状況】
Aさんはオンラインショップで新しいスマートフォンを注文しました。しかし、注文確認メールには「通常1週間程度で発送します」とだけ記載されており、具体的な発送日や到着予定日が明示されていませんでした。

【問題点】
Aさんは2週間待ってもスマートフォンが届かず、ショップに問い合わせると「在庫がないため発送が遅れています」との回答がありました。Aさんは具体的な提供時期が明示されていなかったため、どのくらい待てば良いのか不安と不満が募りました。

【結果】
Aさんは返品を希望しましたが、対応に時間がかかり、更に不満が増大。最終的にAさんはSNSでショップの対応の悪さを公表し、ショップの評判が悪化しました。

具体例2: 提供時期を過ぎても商品が届かない場合

【状況】
Bさんはクリスマスプレゼントとしておもちゃをオンラインで購入しました。オンラインショップには「12月20日までに発送」と明記されており、Bさんはクリスマス前に商品が届くと安心していました。

【問題点】
しかし、12月20日を過ぎても商品は発送されず、Bさんがショップに問い合わせると「予想以上の注文があったため、発送が遅れています」との回答がありました。結局、商品が届いたのはクリスマス後でした。

【結果】
Bさんは予定していたプレゼントを渡せず、子供たちは失望しました。Bさんはショップに対して強い不信感を抱き、今後そのショップでの購入を避けるようになりました。

具体例3: 遅延連絡なしで商品が提供されない場合

【状況】
Cさんは新しい家具をオンラインで購入しました。ショップのウェブサイトには「3週間以内に配送」と記載されていたため、Cさんは引っ越しの日程に合わせて注文しました。

【問題点】
3週間が過ぎても家具が届かず、ショップからの連絡もありませんでした。Cさんが問い合わせると「配送業者の都合で遅れています」との説明がありましたが、具体的な到着日については回答が得られませんでした。

【結果】
Cさんは新居に必要な家具がないまま生活を始めざるを得ず、大変不便な思いをしました。ショップへの信頼を失い、友人や家族にもそのショップを利用しないよう忠告しました。

これらの具体例からわかるように、商品の提供時期について明確な表示をせず、または表示した提供時期を過ぎても商品を提供しないことは、消費者との間で大きなトラブルを引き起こします。これにより、消費者の不満が増大し、最終的にはショップの評判や信頼性に悪影響を及ぼします。そのため、事業者は提供時期を明確に表示し、遅延が発生する場合は迅速かつ適切な対応を心掛けることが重要です。

⑤ 事業者情報の不適切な表示

事業者の名称や連絡先など、事業者を特定するための情報が適切に表示されていない場合、消費者が問題発生時に適切な対応をとることが難しくなる可能性があります。

これらの違反行為は、行政処分や罰則だけでなく、ブランドの信頼性低下やリピート購入の減少など、事業者にとって大きな損失をもたらす可能性があります。そのため、特定商取引法の遵守は、消費者との信頼関係を維持し、長期的なビジネスの成功を確保する上で極めて重要です。

《具体例》
具体例1: 連絡先の未表示

【状況】
Dさんはオンラインショップで衣料品を購入しました。商品が届いた後、サイズが合わなかったため返品を希望しました。しかし、ショップのウェブサイトには連絡先の電話番号やメールアドレスが記載されていませんでした。

【問題点】
Dさんは返品手続きを進めることができず、やむを得ずサイトのお問い合わせフォームから連絡を試みましたが、返信がありませんでした。

【結果】
Dさんは返品期限が過ぎる前に対応してもらえず、最終的には返品できませんでした。これにより、Dさんはショップへの不信感を抱き、二度とそのショップで購入しないことを決めました。

具体例2: 虚偽の事業者名

【状況】
Eさんは人気ブランドの化粧品を安価で提供するウェブサイトで商品を注文しました。しかし、注文後に届いたメールには全く違う名前の会社が記載されていました。

【問題点】
商品が偽物であることに気付いたEさんは返品を希望しましたが、ウェブサイトに記載されていた事業者名と実際の事業者名が異なるため、どこに連絡すれば良いかわからず、問題解決ができませんでした。

【結果】
Eさんは消費者センターに相談することを決めましたが、最終的に問題は解決しませんでした。この経験から、Eさんは他の消費者に対してそのウェブサイトの利用を避けるよう注意喚起しました。

具体例3: 住所の誤表示

【状況】
Fさんはインテリア用品を販売するオンラインショップで購入をしました。商品に不具合があり、返品を希望して返品先の住所を確認したところ、ウェブサイトに記載されている住所が存在しないものであることが判明しました。

【問題点】
Fさんは返品先の住所が正しくないため、商品を送り返すことができず、返金も受け取れませんでした。ショップに連絡を試みましたが、返信がなく、対応が得られませんでした。

【結果】
Fさんは不良品のまま商品を保持するしかなく、ショップへの信頼を完全に失いました。この経験をSNSで共有したため、ショップの評判は大きく傷つき、他の消費者からの信頼も失いました。

これらの具体例からわかるように、事業者情報の不適切な表示は消費者に大きな不便をもたらし、トラブルの原因となります。このような問題は、事業者にとって信頼性の低下、ブランドイメージの悪化、リピート購入の減少といった重大な損失を引き起こす可能性があります。特定商取引法の遵守は、消費者との信頼関係を維持し、長期的なビジネスの成功を確保する上で極めて重要です。

まとめ

特定商取引法は、消費者を保護するために設けられた法律であり、特にオンラインで商品やサービスを販売する際には重要です。販売価格、送料、返品条件、商品の内容、事業者情報、支払い方法と時期など、消費者に対する重要な情報を明示する義務があります。これらの表示義務を守ることで、消費者が安心して購入できる環境を提供し、トラブルを未然に防ぐことができます。

違反した場合には、行政処分や罰則が科される可能性があるため、事業者は特定商取引法を遵守することが求められます。信頼性の高いブランドを築くためにも、特定商取引法の徹底した理解と遵守が不可欠です。

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