自社サイトを改善しても一向に売上が増えないことがあります。サイト上から売上が増えない理由には様々なものがあります。今回はその理由の1つを解説します。
目次
「商品・サービスを売るのに時間がかかる」という理由のため売上が増えないことがある
ウェブサイトでの成約率が低い一因としてあるのが、一部の商品やサービスは購入決定に時間がかかるというものがあります。これは特に高額商品や複雑なサービス、情報の収集や比較を必要とする商品・サービスを販売する時に生じる問題です。
例えば、次のような商品・サービスがそれに該当します。
1. 高額なもの
2. 複雑なもの
3. 情報収集・比較が必要なもの
1. 高額なもの
車、不動産、高級家具や高級家電など、価格が高いため、一般的に購入には時間と慎重な考慮が必要です。何故これら高額なものを購入する際には時間と慎重な考慮が必要なのかというと次のような理由があるからです。
① 大きな出費が生じるから
これらの商品は高価であるため、購入には大きな金銭的な投資が必要です。多くの人は、高額な支出を慎重に検討し、自分の経済に与える影響を考慮します。
② 長期的に使用するから
車、不動産、高級家具などは、長期的な使用を前提とした商品です。購入者は、これらの商品を長い期間使用することを想定しているため、慎重に選択する必要があります。
③ 自分のライフスタイルや価値観にあっているかを検討する必要があるから
これらの商品は、個人的な嗜好や必要性に大きく依存します。購入者は、自分のライフスタイルや価値観に合った商品を選ぶために、時間をかけて検討します。
④ 比較検討が必要だから
高額商品には多くの選択肢があるため、購入者は様々な商品を比較検討する必要があります。特徴、品質、価格などを慎重に吟味し、最適な選択をするためには時間がかかります。
⑤ 追加で発生する費用を考慮する必要があるから
車や不動産などの商品には、購入後の維持費、修理費、税金など、追加の費用が発生します。購入者は、これらの長期的な費用も考慮に入れる必要があります。
これらの理由から、高額商品の購入決定には、一般的に時間と慎重な考慮が必要とされます。
2. 複雑なもの
保険、金融投資サービス、コンサルティングサービスなどは、その内容を理解し、複数の企業が提供しているもの同士を比較するための時間が必要です。その理由としては次のようなものがあります。
① 商品構造が複雑だから
これらのサービスは、多くの場合、複雑な商品構造を持っています。保険の補償内容や金融商品の仕組みなどを理解するためには、一定の時間と知識が必要です。
② 個人のニーズとマッチしているかを考える必要があるから
保険や金融商品は、個人のライフスタイルや将来の目標に大きく依存します。自分のニーズに合ったサービスを選ぶためには、十分な検討が必要です。
③ リスクと利益のバランスを取る必要があるから
これらのサービスには、一定のリスクが伴います。リスクと潜在的な利益のバランスを理解し、自分の許容範囲内で最適な選択をするためには、慎重な検討が必要です。
④ 長期的な影響があるから
保険や金融商品は、長期的な財務状況に影響を与えます。長期的な視点で、これらのサービスがもたらす影響を評価するためには、時間をかけた検討が必要です。
⑤ 複数の選択肢を比較検討する必要があるから
保険、金融、コンサルティングのサービスは、多くの企業が提供しています。各社のサービス内容、料金体系、実績などを比較検討するためには、一定の時間が必要となります。
3. 情報収集・比較が必要なもの
旅行プラン、教育・学習サービスなどは、提供される内容や価格を比較検討することが一般的です。何故そうすることが一般的なのかという理由には次のようなものがあります。
① 個人的な嗜好と目的を検討する必要があるから
旅行プランや教育サービスは、個人の嗜好や目的に大きく依存します。自分に合った内容やスタイルのサービスを選ぶためには、複数の選択肢を比較検討する必要があります。
② 価格の幅があるから
これらのサービスには、低価格から高価格までの幅広い選択肢があります。予算に合ったサービスを選ぶためには、価格を比較検討することが重要です。
③ サービスの質に差があるから
旅行プランや教育サービスの質は、提供者によって大きく異なる可能性があります。適切な質のサービスを選ぶためには、評判や口コミなどを参考にして比較検討する必要があります。
④ 長期的な影響があるから
教育サービスは、個人の将来のキャリアに長期的な影響を与える可能性があります。長期的な視点で、サービスの内容と潜在的な効果を比較検討することが重要です。
⑤ 代わりの選択肢が存在する可能性があるから
旅行プランや教育サービスには、多くの代替選択肢があります。自分のニーズに最も適したサービスを選ぶためには、幅広い選択肢を比較検討する必要があります。
高額な商品・サービスの成約率を高めるための対策
これらの商品やサービスの成約率を高めるためには次のような対策が有効です。
1. リマーケティング
2. コンテンツマーケティング
3. メールマーケティング
4. カスタマーサービスの強化
1. リマーケティング
「リマーケティング」(remarketing)とは、一度ウェブサイトを訪れたユーザーに対して、再度広告を表示することで、商品やサービスへの関心を保つウェブマーケティングの手法を指します。具体的には、ユーザーが自社のウェブサイトを訪れた後、他のウェブサイトを閲覧しているときに、自社のウェブサイトの広告が表示されるようにするものです。
リマーケティングの主な目的は、ユーザーが最初の訪問で購入に至らなかった商品やサービスについて、再びそのユーザーに思い出してもらうことです。リマーケティングは、様々なプラットフォーム(Google広告、Instagram広告、Facebook広告、Twitter広告など)で利用できるものです。
リマーケティングの有効性は、ユーザーが初回にサイトを訪問した時に購入に至らなかった商品やサービスに再度関心を持つ可能性があるという事実に基づいています。これは特に、ユーザーが購入決定をするまでに時間がかかる商品やサービスに対して有効な戦略となります。
「リマーケティング」という言葉は、「リターゲティング」と同じ意味で一部のマーケティング専門家やプラットフォームで使われることがあります。両方とも、ウェブサイトを訪れたが何も購入せずに離れてしまったユーザーを対象とした広告戦略のことです。
ただし、厳密にはこれらはそれぞれ異なる広告戦略を指すことがあります。
① リマーケティング
一般的には、電子メールによるリマーケティングを指します。つまり、オンラインストアで商品をカートに追加したが購入を完了しなかった顧客に対して、メールを送る戦略を指します。これは「カート放棄」または「カゴ落ち」と呼ばれる現象が起きた時に、その顧客に商品を再度検討してもらうようにメールを出すものです。
② リターゲティング
一方、リターゲティングは主にクッキーを利用した広告手法を指します。これはウェブサイトの訪問者に対して、別のウェブサイトやソーシャルメディアプラットフォームで広告を表示するものです。リターゲティングの目的は、自社のブランド名の記憶を維持し、顧客にウェブサイトに戻ってもらいコンバージョンをさせることです。
2. コンテンツマーケティング
「コンテンツマーケティング」とは、企業が顧客や見込み顧客に対して有益なコンテンツを提供することにより、信頼関係を築き、自社商品・サービスの存在を知ってもらい自社のブランドを高く評価してもらい、最終的に商品・サービスの購入につなげるマーケティング手法のことのことを言います
例えば、ブログ記事やホワイトペーパー、動画などを使って、商品やサービスの特徴、使用方法、メリットなどを深掘りしたコンテンツを提供して、メールマーケティングを実施します。
3. メールマーケティング
「メールマーケティング」とは、企業が見込み客や顧客に向けてメールを送信し、無料で役立つや商品・サービスの情報を提供することで、関心や購買意欲を喚起し、売上を向上させることを目的としたマーケティング手法のことです。
ユーザーがウェブサイトを訪れて、コンテンツマーケティングの一環として提供されているホワイトペーパーや資料をダウンロードするためにメールアドレスを入力します。そしてメールアドレスを取得した企業はそのユーザーに向けて、定期的に商品やサービスについての情報を提供することにより関係性を構築することなり、企業のことを信頼してもらうことを目指します。
4. カスタマーサービスの強化
AIチャットボットなどのウェブ接客ツールを導入することで、ユーザーの質問に即座に対応し、製品に対する理解を深めるのに役立ちます。
B2CとB2Bでの違い
またB2C(企業と一般消費者の間の取引)とB2B(企業間取引)では、商品やサービスの購入決定にかかる時間は異なり、それぞれに適したマーケティング戦略が必要となります。
1. B2C
B2Cでは、消費者の購入決定は比較的スピーディーに行われます。しかし、高額商品や複雑なサービスなど、より慎重な考慮を必要とする商品・サービスでは、購入までの時間が長くなることがあります。B2Cでの対応策は、詳細な商品・サービスの説明や、ベネフィット、特徴、使用方法、活用事例についてわかりやすく伝え、顧客が商品・サービスを理解しやすくすることです。
この他にも、購入を検討している消費者はレビューや評価を参考にし、迅速なカスタマーサポートを求める傾向があります。レビューや評価は他の消費者からのフィードバックは、購入決定の重要な要素となります。真剣に購入を検討している消費者は、他の人々の意見や経験を知りたがることが多い傾向があります。
そして、迅速なカスタマーサポートを求める傾向があるため、購入前の疑問や懸念に対応するため、ライブチャットやFAQなどを提供することがコンバージョン率を高めることになります。
2. B2B
一方、B2Bの商品・サービスは、B2Cのものと比べると高額であり、その採用がビジネス全体に大きな影響を与えるため、購入決定には数週間から数ヶ月、場合によってはそれ以上の時間が必要となることが一般的です。
B2Bでの対応策は、教育的なコンテンツの提供、つまりホワイトペーパー、事例集、ウェビナーなどを用いて、商品・サービスを購入して得られるベネフィットや顧客のビジネスに対する良い影響を詳細に説明することが有効です。そこでは、製品が顧客のビジネスにどのように適合し、価値を提供できるかを具体的に示すことが重要です。そしてセールスチームがある場合は見込み客との間で継続的なコミュニケーションを維持し、見込み客が抱える問題を理解し、その問題に対する解決策を提案しましょう。
こうしたプロセスは多くの時間と人員を要する手間がかかる作業ですが、このプロセスを効率的に実施する手段として最近普及しているのがMA(Marketing Automation)というツールです。「MA」(Marketing Automation)とは、マーケティング活動をデジタルツールを使い自動化し、管理し、効果を測定するための技術を指します。
この技術は、複数のチャネル(電子メール、ソーシャルメディア、ウェブサイトなど)を介した広告キャンペーンの効率を大幅に向上させるために使用されます。
国内で人気のMAツールには、Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)、HubSpot、BowNow、Adobe Marketo Engage、SATORIなどがあります。
《MAツール「SATORI」の公式サイト》
MAのメリットとデメリット
MAには多くのメリットがありますが、同時に一部デメリットもあります。
《メリット》
① 多くの時間と労力が節約できる
メール配信、ソーシャルメディア投稿、レポート生成など、繰り返し行う作業を自動化することで時間と労力を節約できます。
② 効果的なリード管理ができる
リードとは、マーケティング用語で、見込み客のことを指します。ユーザーの行動や属性に基いて各ユーザーを個別に自動でスコアリングすることで、リードの優先順位を効果的に管理できます。
③ パーソナライゼーションができる
ユーザーの行動に応じてパーソナライズされたメッセージを自動的に送信することで、より高いエンゲージメントとコンバージョン率を達成できます。
「パーソナライズ」(personalize)とは、個々のユーザーの行動、嗜好、過去の購入履歴などの情報を用いて、そのユーザーに最適化された個別の体験を提供することを指します。
④ 効果の測定と分析ができる
各マーケティングキャンペーンの成果をリアルタイムで追跡し、詳細なレポートを生成することで、マーケティングの投資対効果(ROI)を測定できます。
《デメリット》
① 設定と管理が複雑である
MAツールの設定と管理は比較的複雑であり、一部のツールは技術的な知識を必要とします。
② 初期投資と継続的な費用がかかる
高機能のMAツールは比較的高価であり、また、一部のツールは追加のサポートやトレーニングの費用が必要となる場合があります。
③ 過度な自動化により見込み客に非人間的な印象を与える危険性がある
MAツールの利用が過度になると、コミュニケーションが非人間的になる危険性があります。これは、特に顧客がパーソナルな対話を求めるB2Cの環境で問題となることがあります。
④ データの品質と整合性を保つのが簡単ではない
MAツールは、その機能を最大限に活用するためには高品質なデータが必要です。しかし、データの品質や整合性に問題があると、結果的に誤った結論や戦略につながる可能性があります。
MAツールを導入する際には、これらのメリットとデメリットを十分に考慮し、自社のニーズを満たす最適なツールを選ぶことが重要です。
以上が、売るのに時間がかかる商品・サービスの特徴と、売るために必要な戦略と実施方法についてです。自社の商品・サービスがこのジャンルの商材に当てはまる場合は焦らずに着実に時間をかけたマーケティングに取り組みましょう。