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特定電子メール法とは?

最終更新日:2024年7月21日 監修:弁護士 吉田泰郎

現代のビジネスにおいて、メールマーケティングは顧客との重要なコミュニケーション手段となっています。しかし、メールマーケティングを行う際には、受信者のプライバシーを尊重し、法的規制を遵守することが不可欠です。特に日本国内では、特定電子メール法がその指針となります。特定電子メール法に基づくメールマーケティングのガイドラインについて解説します。

特定電子メール法とは?

特定電子メール法は、迷惑メールの送信を防止するために制定された法律です。この法律は、広告や宣伝を目的とした電子メールの送信に関して、明確なルールを設けています。これにより、受信者が意図しない広告メールを受け取ることを防ぎます。ウェブサイト運営者やメールマーケティングを行う事業者は、この法律を遵守することが求められます。

受信者の事前同意の必要性

特定電子メール法において、広告メールを送信する前に受信者から事前に同意を得ることが義務付けられています。これを「オプトイン」と呼び、受信者の同意を得るための具体的な方法としては以下が挙げられます:

メールアドレス収集時の同意確認

メールアドレスを収集する際に、広告メールの受信に同意するチェックボックスを設置します。

ダブルオプトイン

確認メールを送信し、受信者が再度同意する手続きを行う方法です。これにより、受信者の明確な意思を確認できます。

配信停止手段の明示

広告メールには、受信者が容易に配信停止を求められる手段を明記する必要があります。これは「オプトアウト」と呼ばれ、具体的には以下の要素を含みます:

配信停止の方法の明示

メールの最後に、配信停止を希望する場合の手続き方法を明記します。具体的には、送信者に連絡するための連絡先を記載するか、自動的に受信を解除できるURLを設置します。

配信停止の迅速な対応

受信者からの配信停止リクエストには速やかに対応し、今後のメール送信を停止します。

メールの記載内容の具体例

受信者が配信停止を容易に行えるようにするための具体的な記載方法の例を以下に示します。

『このメールは、弊社の最新商品情報やキャンペーン情報をお届けするために送信しています。今後、弊社からのメール配信を希望されない場合は、以下のリンクをクリックして配信停止手続きを行ってください。

[配信停止はこちら](https://example.com/kaijo)

または、配信停止のご依頼を以下のメールアドレスまでご連絡ください。
配信停止連絡先:kaijo@example.com』

このように、受信者が簡単に配信停止を行える手段を提供することが重要です。

遵守の重要性

特定電子メール法を遵守しない場合、法的な罰則が科される可能性があります。具体的には、罰金や業務停止命令などがあり、企業の信頼性に大きな影響を与えます。また、受信者との関係性も悪化する可能性があるため、注意が必要です。

違反となる良くないメールマーケティングの運営例

特定電子メール法を遵守しないメールマーケティングは、法的な問題を引き起こし、企業の信頼を損なう可能性があります。以下に、企業が陥りがちな良くない運営方法の例をいくつか挙げます。

1. 事前同意を得ずに広告メールを送信する

受信者の同意を得ずに広告メールを送信することは、特定電子メール法に違反します。例えば、以下のようなケースが考えられます:

購入履歴からメールアドレスを収集して無断で広告メールを送信

受信者が購入した際にメールアドレスを提供したことを理由に、事前の同意なしに広告メールを送信する。

第三者から取得したメールリストを使用

購入や取得したメールリストに対して、同意を得ずに広告メールを送信する。

2. 配信停止手段を明示しない

広告メールに配信停止手段を明示しないことも違反行為です。具体例としては:

配信停止リンクが存在しない

メールの中に配信停止のリンクや連絡先が全く記載されていない。

配信停止手段が複雑でわかりにくい

配信停止の手続きが複雑で、受信者が容易に配信停止を行えないようにしている。

3. 配信停止リクエストに対応しない

受信者からの配信停止リクエストに対して適切に対応しないことも問題です。例えば次のような例があります:

配信停止リクエストを無視する

受信者からの配信停止リクエストを無視し、引き続き広告メールを送信する。

対応が遅い

配信停止リクエストに対して対応が遅く、数週間またはそれ以上広告メールの送信を続ける。

4. 虚偽または誤解を招く情報を含むメールを送信する

特定電子メール法では、虚偽または誤解を招く内容を含む広告メールの送信も禁止されています。具体例としては:

虚偽の発信者名やメールアドレスを使用する

発信者名やメールアドレスを偽って受信者を騙す。

内容に誤解を招く情報を含む

実際には提供していないサービスや商品についての誤った情報を記載する。

5. 不適切なタイミングでメールを送信する

特定電子メール法では、適切なタイミングでメールを送信することも求められます。不適切なタイミングでの送信例としては:

深夜や早朝に広告メールを送信する

受信者が不快に感じる時間帯にメールを送信する。

過剰な頻度でメールを送信する

短期間に何度も広告メールを送信し、受信者に迷惑をかける。

違反例


日本国内での特定電子メール法違反の判例は、いくつかの事例が報告されています。以下に、代表的な事例を紹介します。

M社のケース

M社は、自社のウェブサイト「MOON」の広告を含む電子メールを、受信者の事前同意なしに送信していました。これに対して、総務省及び消費者庁は特定電子メール法第7条に基づき、措置命令を実施しました。このケースでは、同意を得ずに広告メールを送信することが違法であると判断されました。

L社のケース

L社は、自社の運営するアプリ及びチャットの広告を行う電子メールを、同様に受信者の同意なしに送信していました。総務省及び消費者庁は、特定電子メール法違反により、この企業に対しても措置命令を発令しました。このケースも、事前の同意を得ずに広告メールを送信することが違法であると認定されています。

違反が確認された共通の問題点

これらの判例に共通する問題点として、以下の点が挙げられます:

受信者の事前同意の欠如

特定電子メール法では、広告メールを送信する前に必ず受信者の同意を得ることが義務付けられていますが、これを無視してメールを送信していた。

適切な配信停止手段の未提供

広告メールには、受信者が容易に配信停止を要求できる手段を明示する必要がありますが、これが不十分であった。

まとめ

特定電子メール法に基づく適切なメールマーケティングの実施は、企業の信頼性を高め、受信者との良好な関係を築くために極めて重要です。事前同意の取得と配信停止手段の明示を徹底することで、法を遵守したメールマーケティングを実現し、受信者からの信頼を得つつ効果的なマーケティングを行いましょう。このガイドラインに従うことで、受信者からの信頼を維持し、ビジネスの成長を促進することができます。

ウェブサイト運営者やマーケティング担当者の皆さん、是非とも特定電子メール法の遵守を徹底し、法に則った安全かつ効果的なメールマーケティングを行ってください。

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