ウェブマーケティング

ウェブサイト運営者が知るべきコンプライアンスの重要性

最終更新日:2024年8月26日 監修:弁護士 吉田泰郎

ウェブサイト運営を持続し、業績を伸ばすには、企業がおかれる社会が合意した法律、法令を守らなくてはなりません。それらの重要性を軽視すると、ウェブサイトを平常通り運営することが困難になり、企業に大きな打撃を与えることになります。

コンプライアンスとは?

企業の存続と発展に不可欠な取り組みがあります。それは「コンプライアンス」=法令遵守です。この重要性を軽視すると、どんなにウェブサイトの運営が成功していたとしても一瞬で全てを失うことになります。そしてインターネットが普及して影響力を持つようになった現代社会では企業の存続に関わる深刻な事態を招くことになります。

そうした事態を避けるためにはウェブサイトの運営、ウェブマーケティングの実施をする上でどのような法律があり、どのような点に気をつけなければならないのかを知る必要があります。

企業が遵守するべき法令には次のようなものがあります。

[1] 個人情報保護法
[2] 特定商取引法
[3] 特定電子メール法
[4] 著作権法
[5] 不正競争防止法
[6] 景品表示法
[7] 品質表示法
[8] PL法
[9] 電子消費者契約法
[10] 資金決済法
[11] 薬機法
[12] 医療広告ガイドライン

1. 個人情報保護法

ウェブサイトを通じて顧客の個人情報を取得する場合、その取り扱いについては厳重な注意が必要です。日本の個人情報保護法に基づき、個人情報の取得、利用、管理には適切な手続きを行わなければなりません。ウェブサイト運営者は、個人情報の取り扱いについて明記したプライバシーポリシーを設け、利用者の信頼を得ることが求められます。この法律では、情報収集の際に利用者の同意を得ること、事前に通知または公表した利用目的の範囲内でのみ個人情報を使用すること、そして利用者の同意なしに第三者へ情報を提供しないことなどが定められています。また、適切な安全管理措置を講じて情報漏洩を防止し、利用者が自身の情報の開示や訂正、削除を請求できる体制を整える必要があります。

これらの規定を守らないと、企業は法的制裁を受けるだけでなく、ブランドの信頼性を損なう可能性があります。違反行為の例としては、不適切な情報収集や目的外利用、無許可の第三者提供、情報漏洩、開示・訂正・削除への対応不備が挙げられます。さらに、EUのGDPRや米国カリフォルニア州のCCPAなど、国外の個人情報保護法にも留意する必要があります。GDPRは、日本の法規と異なり、IPアドレスやCookieも個人情報に含むため、日本のウェブサイトもこれらの規制に対応する必要があります。

ウェブサイトでは、ユーザーにクッキーポリシーへの同意を求める画面を表示し、同意しなかった場合でもサイトを利用できるようにすることが求められます。また、プライバシーポリシーのページでは、企業が個人データをどのように収集、使用、保管、共有するかについて詳しく説明し、必要に応じてデータ保護オフィサーの連絡先を掲載することが求められます。現在は大企業や政府機関が主に対応していますが、今後は中小企業や個人事業主もこれらの対応が必要になる可能性があります。適切なコンプライアンス体制を整えることが重要です。

《関連情報》 個人情報保護法とは?

2. 特定商取引法

特定商取引法は、オンラインで商品やサービスを販売する際に、消費者保護を目的として重要な情報をサイト上に明示することを義務付けています。ウェブサイトでの販売において、販売価格、送料、返品条件などをはっきりと表示し、消費者が必要な情報を十分に得られるようにしなければなりません。

販売価格は消費税を含む総額で明確に表示することが求められ、送料についても別途必要な場合や無料の場合を含めて詳細に示す必要があります。商品の返品や交換の条件とその手続き方法も明確に説明することが義務付けられています。また、商品の名称、型番、材質、生産国、製造者などの主要な内容を正確に表示することが求められます。

事業者の名称、住所、連絡先(電話番号やメールアドレス)などの情報も明示する必要があり、支払い方法や商品の提供時期についても詳細に記載しなければなりません。これらの表示義務を守らない場合、行政処分や罰則が科される可能性があります。

特定商取引法に違反する例としては、必要な情報の不適切な表示や誤解を招く表示、消費者にクーリングオフの権利を適切に説明しないこと、商品の提供遅延、事業者情報の不適切な表示などが挙げられます。これらの違反は法的制裁を受けるだけでなく、ブランドの信頼性低下やリピート購入の減少といった事業者にとって大きな損失をもたらす可能性があります。

したがって、特定商取引法を遵守することは、消費者との信頼関係を維持し、長期的なビジネスの成功を確保するために極めて重要です。

3. 特定電子メール法

特定電子メール法は、迷惑メールの送信を防止するために制定された法律です。この法律は、広告や宣伝を目的とした電子メールの送信に関して、明確なルールを設けています。これにより、受信者が意図しない広告メールを受け取ることを防ぎます。ウェブサイト運営者やメールマーケティングを行う事業者は、この法律を遵守することが求められます。

4. 著作権法

ウェブサイト上で他人の著作物を使用する場合、著作権法に抵触しないように注意することが重要です。著作権法は創作物の作者がその作品に対して持つ権利を保護し、作品を複製したり公開したりする権利が含まれます。これらの行為を他人が行うには、原則として作者の許諾が必要です。

ウェブサイトで他人の著作物を使用する場合、まず著作権者から許諾を得る必要があります。例えば、写真やイラスト、文章、音楽などを掲載する際には、著作権者から利用許諾を得ることが求められます。また、著作権フリーの素材を使用する場合でも、その使用条件を確認し、必要に応じてクレジット表記を行うことが重要です。

他人の著作物へのリンクや引用についても注意が必要です。リンクを張る際には、対象ウェブサイトのリンクポリシーを確認し、許可が必要な場合は事前に確認します。引用は著作権法で許可されていますが、適切な範囲と方法で行うことが求められます。

これらの注意点を守らないと、著作権侵害による法的トラブルや罰金、損害賠償のリスクがあります。著作権侵害は企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性が高いため、著作権法の遵守が非常に重要です。具体的なトラブルとしては、無許可の利用やライセンス違反、不適切な引用、リンク設定の問題などがあり、これらは企業の信頼性にも大きな影響を与えることがあります。そのため、ウェブサイト運営者は著作権法を理解し、適切に遵守することが求められます。

5. 不正競争防止法

不正競争防止法は、他社の企業秘密を不正に取得したり、不当な営業方法を用いて競争相手を不利にしたりする行為を禁止する法律です。
ウェブサイト上で公開する情報には注意が必要です。企業秘密を無断で公開したり、他社の企業秘密を不正に利用してはなりません。
他社の商品・サービスを不当に中傷したり、他社の商標や商号を不正に使用したりする行為は、不正競争防止法に違反する可能性があります。

6. 景品表示法

景品表示法は、消費者が公正な選択をするために不当な広告や表示を制限し、禁止することを目的とした法律です。この法律は消費者の利益を保護するために設けられており、特に「表示」において問題となるのは優良誤認表示と有利誤認表示です。

優良誤認表示とは、商品やサービスが実際よりも優れているかのように消費者を誤解させる表示です。例えば、「運動や食事制限なしで簡単に3キロ痩せる」といった科学的根拠のない効果を謳う広告が該当します。

有利誤認表示は、商品やサービスの価格や条件が実際よりも好条件であるかのように消費者を誤解させる表示です。例えば、「10個買うと1個無料」と宣伝しておきながら、実際には無料にしない場合がこれに該当します。

広告で商品やサービスの効果を主張する際には、その効果を裏付けるデータや証拠が必要です。誇大な表現や事実に基づかない主張は避けるべきです。また、他社の商品と比較して自社の商品が優れていると主張する場合も、公正で公平な比較が求められます。「必ず痩せる」や「絶対に成功する」といった効果を保証する表現は誇大広告と見なされるため、科学的根拠に基づき誤解を招かない表現に改めるべきです。

この法律は、ランキングサイトにおいても適用されます。自社の商品やサービスをランキングの上位に表示するために不正な方法を用いたり、他社のランキングサイトに金銭を払って上位に表示させることは、景品表示法に違反する可能性があります。景品表示法の遵守は、消費者に正確な情報を提供し、公正な市場競争を維持するために重要です。

《関連情報》 景品表示法とは?

7. 品質表示法

商品の性質は正確に表示しなければなりません。誤った情報や誇大広告は違法となります。価格、品質、性能などの表示は、消費者が誤解を生じないように明確にする必要があるので注意しましょう。

8. PL法

PL法、すなわち製造物責任法は、企業が製造した製品の欠陥によって人の生命、身体、または財産に被害が生じた場合、被害者が製造業者に対して損害賠償を求めることができるとする法律です。

ウェブサイト運営において重要な点は、まず製品の安全性を確保することです。オンラインで製品を販売する際、製品に欠陥が見つかった場合、企業は直ちに消費者に通知し、必要に応じて製品を回収・修理するなどの対策を取る義務があります。

また、ウェブサイトは製品に関する最新情報を提供する手段としても重要です。製品の回収や修理に関する情報をタイムリーに更新し、消費者に適切な通知を行うことが求められます。

さらに、ウェブサイト上で製品説明を行う際には、その説明が正確であり、安全性に関する情報も含まれていることを確認する必要があります。誤った情報を提供することで生じた事故に対して、企業は責任を問われる可能性があります。

これらのポイントを踏まえ、ウェブサイトを通じて製品を販売する企業は、製品の安全性を確保し、消費者に対して正確な情報を提供することが不可欠です。

9. 消費者契約法・電子消費者契約法

消費者契約法と電子消費者契約法は、ウェブサイト上で商品やサービスを消費者に販売する際に遵守すべき法律です。これらの法律は、消費者が契約内容を十分に理解できるように情報提供を求めています。

消費者契約法では、まず契約内容の明確化が重要です。オンラインで商品やサービスを提供する際には、消費者が契約内容を理解しやすいように、詳細や価格、支払い方法、配送方法、返品・交換・キャンセルのポリシーなど、必要な情報をすべて明示する必要があります。通信販売ではクーリングオフ制度の採用は義務ではありませんが、採用する場合には消費者に正確な手続きを説明する必要があります。

また、事業者が事実と異なる内容を説明して契約を結んだ場合、消費者は「不実告知」を理由に契約を取り消すことができます。例えば、「新品」と記載されていたが実際は中古品だった場合や、「純正品」とされていたが無名メーカーの製品だった場合などが該当します。その他に、「断定的判断の提供」や「不利益事実の不告知」があった場合も契約取消の理由となります。

電子消費者契約法では、インターネット通信販売において消費者が申し込んだ契約内容を最終確認できる画面を用意することが求められています。これは、誤ってクリックして契約が成立してしまうことを防ぐためです。最終確認画面を用意しない場合、消費者が「間違いクリックだった」と主張すると、契約が無効になる可能性が高くなります。

消費者契約法と電子消費者契約法の遵守には、消費者に対して契約内容をわかりやすく説明し、情報を十分に提供することが求められます。不実告知や断定的判断の提供、不利益事実の不告知を行った場合、消費者から契約を取り消されるリスクがあります。また、インターネット経由での契約には必ず最終確認画面を設けることが推奨されます。

10. 資金決済法

資金決済法は、電子マネーや決済サービスに関する規制を定めた法律です。この法律の目的は、急速に普及する電子マネーや決済サービスを提供する事業者の行為を適切に規制し、消費者を保護することです。

ウェブサイト運営やウェブマーケティングにおいて、特に注意すべき点としてはまず登録制度があります。電子マネーの発行や送金サービスを提供する事業者は、金融庁に登録する義務があり、これは消費者を不適切な行為から守るための制度です。

次に、事業者には料金や利用限度額、払い戻しの条件など、消費者がサービスを安全に利用できるための重要な情報を明示する義務があります。これにより、消費者が安心してサービスを利用できる環境を整えることが求められます。

さらに、利用者保護のための措置が求められています。例えば、電子マネーの残高が一定額を超えた場合、その超過部分を信託保全するなどの対策を講じる必要があります。これにより、利用者の利益を保護し、信頼性の高いサービス提供を行うことが重要です。

資金決済法の遵守は、消費者の保護とサービスの信頼性確保のために不可欠であり、事業者はこの法律に基づいて適切な運営を行うことが求められます。

11. 薬機法

日本でサプリメントを販売する際には、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制を遵守する必要があります。ウェブサイトでの販売においても、この法律に基づいた適切な運営が求められます。

まず、サプリメントの効能や効果を表示する際には、特定の病気や症状の治療効果を謳うことは禁じられています。具体的な病名を挙げたり、治療や予防効果を示唆する表現を避けなければなりません。

次に、安全性の確認も重要です。サプリメントの成分はその安全性が確認されているものであり、一部の成分については使用量に制限があります。そのため、成分の使用量や安全性を確認する必要があります。

また、製造過程での品質管理も不可欠です。衛生管理や原材料の管理、製品の検査など、製品の品質を保証するための適切なシステムを設けることが求められます。

海外からサプリメントを輸入する場合、輸入手続きや対象商品が日本の規制に適合しているかを確認する必要があります。特に、医薬品と判断される可能性のある成分が含まれている場合、薬機法の規制が適用され、輸入には薬事承認が必要となることがあります。

12. 医療広告ガイドライン

厚生労働省が公表した「医療広告ガイドライン」は、医療機関が公平な競争を行い、消費者が適切な情報に基づいて健康に関する判断を行うための指針です。このガイドラインに違反すると広告の差し止めや削除命令が下されるだけでなく、懲役や罰金が課される可能性があり、社会的な信用を失うことにもつながります。

ガイドラインの主なポイントは以下の通りです。まず、医療機関の広告は事実に基づいて公正に行われるべきであり、消費者の適切な選択を補助するものであることが求められます。広告は医療サービスの内容、価格、品質などを適切に提供し、誤解を招くような不適切な表現や過大な表現を避ける必要があります。

また、治療成果を開示する際には、その根拠となる客観的なデータや情報を示すことが求められ、個々の治療成果を一般化する表現は避けるべきです。他の医療機関と比較する広告を行う場合、その比較が公平で公正であり、根拠となる情報が客観的であることが求められます。

まとめ

これらの法律やガイドラインを遵守することは、ウェブサイト運営者にとって重要な責任です。適切なコンプライアンス体制を構築することで信頼性の向上と法的リスクの軽減につながります。関連する情報を随時チェックし、更新することも重要で、最新の情報を把握して適切に対応することが求められます。

具体的には、まず法律の理解と学習が必要です。法令遵守に関する社内ルールの作成や専門の担当者の配置、定期的な研修の実施など、内部の法令遵守体制を整備することが重要です。また、企業の運営やサービスが法令を遵守しているかどうかを定期的にチェックし、問題が発覚した場合の対応策をあらかじめ準備しておくことも必要です。違反が発覚した場合には速やかな改善と再発防止策の策定が求められます。

企業が法令を遵守するためには、法令の理解と適用、内部体制の整備、定期的なチェック、適切な対応策が必要となります。そして、これらすべてのプロセスは継続的に行われるべきものであり、一度で終わりではないことを理解することが重要です。

また、複雑な問題を取り扱う場合は、外部との紛争に発展したものに関してはそうした問題で実績のある法律事務所に相談して早期の解決を目指すべきです。具体的には次のような状況が生じたら、法律事務所に相談しましょう。

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