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消費者契約法・電子消費者契約法とは?

最終更新日:2024年8月8日 監修:弁護士 吉田泰郎

ウェブサイト上で商品やサービスを消費者向けに販売する場合、消費者契約法や電子消費者契約法を遵守することが必要です。これらの法律は、消費者が契約内容について十分に理解できるよう、適切な情報提供を義務付けています。今回は、消費者契約法と電子消費者契約法の基本と、その重要なポイントについて詳しく解説します。

消費者契約法の基本

消費者契約法は、消費者が商品やサービスを購入する際に、公正で透明な取引を保証するための法律です。特に、契約内容の明確化や誤った情報提供の防止に重点を置いています。

契約内容の明確化

オンラインで商品やサービスを提供する際には、消費者が契約内容を理解しやすいようにする必要があります。以下の情報を明示することが求められます。

・契約の詳細

商品の特徴、性能、用途などを詳細に記載します。消費者が商品を理解しやすいように、専門用語を避け、簡潔でわかりやすい言葉を使いましょう。

・価格

商品の価格だけでなく、送料や手数料、税金など、消費者が支払う総額を明示します。価格表示が不明確であったり、実際の価格と異なる表示がなされていたりすると、消費者は不利益を被る可能性があります。正確な価格表示が求められます。

・支払い方法

クレジットカード、銀行振込、代金引換など、利用可能な支払い方法を明示します。また、各支払い方法に関する手数料や条件も詳細に記載します。

・配送方法

利用する配送業者、配送期間、送料などを明示します。特に、海外配送の場合は追加料金や関税についても説明が必要です。

・返品・交換・キャンセルのポリシー

商品の返品や交換、キャンセルの条件や手続き方法を明確に記載します。特に、返品期間や返品理由に関する制限については詳細に説明することが重要です。

なお、通信販売の場合、クーリングオフ制度の採用は法律上の義務ではありませんが、事業者が自主的に採用する場合は、その手続きを消費者に正確に説明する必要があります。クーリングオフが適用される場合、適用条件や手続き方法を明確に記載することで、消費者の安心感を高めることができます。

「不実告知」などの場合の契約取消権

消費者契約法では、事業者が事実と異なる内容の説明をした場合、消費者は「不実告知」を理由として契約を取り消すことができます。具体的な例を挙げて説明します。

例1

「新品です」と書かれていたが、中古品だった。この場合、消費者は新品の商品を期待して購入していますが、実際には中古品が届くため、消費者は不利益を被ります。

例2

「マイクロソフトの純正品です」と書かれていたが、無名の中小メーカーの製品だった。消費者は純正品の品質を期待して購入しているため、事実と異なる商品が届いた場合、大きな不満を抱くことになります。

例3

「事故歴はありません」と書かれていたが、実は事故歴があった。中古自動車の購入において、このような虚偽の説明は重大な問題を引き起こします。消費者は安全性を重視して購入しているため、事故歴があることを知らされていなければ、購入決定に影響を与えます。

その他に、「断定的判断の提供」や「不利益事実の不告知」があった場合も、消費者は契約を取り消すことができます。

・断定的判断の提供

そもそも不確実な事項を断定的に提供すること。

例1

「絶対に損をしない株式です」と言って株式を購入させる。このような断定的な発言は、投資のリスクを軽視させるものであり、消費者に誤解を与える可能性があります。

例2

「当社の英語教材で勉強すれば、誰でもTOEIC800点!」と宣伝する。学習効果は個人差があり、このような断定的な主張は不適切です。

・不利益事実の不告知

契約による不利益な事項を説明せずに契約を締結させること。

例1

「静かな住宅街のマンションです」と説明してマンション購入契約を締結させるが、実は隣にパチンコ店が建設予定。消費者は静かな環境を期待して購入しますが、実際には騒音問題が発生するため、消費者にとって重大な不利益となります。

例2

「当社の電動歯ブラシは性能が3倍アップ!」と宣伝するが、電力使用量も3倍増加することを秘密にしている。消費者は性能向上のみを期待して購入しますが、実際には電力使用量が増加するため、コスト増加のリスクがあります。

ネット通販における「申込み」の最終確認義務

インターネット通信販売では、クリックすることで契約の申込みが完了するため、誤ってクリックしてしまうことがまれに発生します。そのため、電子消費者契約法(正確には電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律)では、以下のルールを定めています。

・最終確認画面の提供

消費者が申し込んだ契約内容を最終確認できる画面を用意する。これにより、消費者は間違った申込みをするリスクを減らすことができます。例えば、購入ボタンをクリックする前に、「以下の内容でご注文を確定しますか?」といった確認画面を表示することで、消費者に再確認の機会を提供します。

・確認画面がない場合

後日、消費者から「間違いクリックだった」「操作ミスだった」と主張された場合、契約が無効になる可能性が高くなる。例えば、飼い猫がパソコンに接触して誤ってクリックしてしまった場合や、消費者が意図せずに二重クリックしてしまった場合などが該当します。

まとめ

消費者契約法と電子消費者契約法は、消費者が正確な情報を基に商品やサービスを選べるようにするための重要な法律です。これらの法律を遵守することで、消費者の信頼を得ることができ、法的なトラブルを避けることができます。ウェブサイトで商品やサービスを提供する事業者は、契約内容の明確化、不実告知の防止、最終確認画面の提供などを徹底し、消費者に対して誠実な対応を心がけましょう。

消費者契約法では、特に契約内容の明確化が重要です。商品やサービスの特徴、価格、支払い方法、配送方法、返品・交換・キャンセルのポリシーを詳細に記載し、消費者が安心して購入できる環境を整えることが求められます。

また、「不実告知」や「断定的判断の提供」、「不利益事実の不告知」があった場合、消費者は契約を取り消すことができます。これらの行為は消費者の信頼を損なうだけでなく、法的なリスクを伴います。事業者は、正確で誠実な情報提供を行い、消費者の信頼を築くことが重要です。

さらに、ネット通販における「申込み」の最終確認義務も大切です。最終確認画面を提供することで、消費者が間違って契約を申し込むリスクを減らし、消費者保護を強化することができます。

消費者契約法と電子消費者契約法を遵守することで、企業は消費者からの信頼を得ることができ、長期的なビジネスの成功につながります。消費者に対して誠実な対応を行い、法的なリスクを回避するために、これらの法律の重要性を理解し、適切な措置を講じましょう。

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