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個人情報保護法とは?

最終更新日:2024年7月3日 監修:弁護士 吉田泰郎

企業のウェブサイトを通じて顧客の個人情報を収集する際には、個人情報保護法に基づいた適切な手続きを行うことが必須です。個人情報の取り扱いについて明確なルールを設け、信頼を得るためのプライバシーポリシーを策定することが求められます。本記事では、個人情報保護法に基づくウェブサイト運営における要点と遵守すべきポイントについて詳しく解説します。

個人情報保護法とは?

個人情報保護法は、個人のプライバシーを守るための法律です。企業や団体が個人情報を適切に扱うためのルールを定め、個人の権利を保護します。この法律により、個人情報の収集、利用、管理が規制され、デジタル時代における個人情報の適切な取り扱いが促進されています。

ウェブサイトを通じて顧客の個人情報を取得する場合、その取り扱いについて厳重な注意が必要です。個人情報の取得、利用、管理などについて、個人情報保護法に基づく適切な手続きを行う必要があります。

ウェブサイトを運営する際には、個人情報の取扱いについて明記したプライバシーポリシーを設けることが一般的です。これは利用者の信頼を得るために重要な手段となります。

日本の個人情報保護法は、ウェブサイト運営における個人情報の取扱いについて主に以下のような要件を設けています。

① 情報収集の同意

個人情報を取得する際には、利用者からその情報を取得することへの同意を得る必要があります。具体的な情報の取得方法、利用目的、第三者提供の有無など、個人情報の取扱いに関する事項を利用者に明示し、その同意を得ることが必要です。

② 利用目的の限定

個人情報は、事前に通知または公表した利用目的の範囲内でのみ使用できます。目的外利用は原則禁止されています。

③ 第三者提供の制限

個人情報は、利用者の同意を得なければ第三者に提供することはできません。ただし、法律により例外が認められている場合、例えば、法的義務により情報提供が必要な場合などもあります。

④ 安全管理措置

個人情報は適切に管理しなくてはなりません。適切な安全対策を講じて、情報の漏洩、滅失、毀損を防止する必要があります。

⑤ 開示・訂正・削除の請求

利用者は自身の個人情報について、開示、訂正、削除などの請求を行う権利があります。ウェブサイト運営者はこれらの請求に対応するためのシステムを設ける必要があります。

個人情報保護法違反に関連するトラブル

これらのことを知らずに、あるいは知っていても守らない企業が引き起こす個人情報保護法違反に関連するトラブルとしては以下のようなケースがあります。

① 不適切な情報収集

利用者からの明示的な同意なく個人情報を収集したり、その使用目的を明確に伝えないまま情報を収集する行為は問題となります。

② 目的外利用

ウェブサイト上で利用者に告知した利用目的以外での個人情報の使用は違法行為です。例えば、サービス利用のための情報収集と告知したにも関わらず、マーケティング活動に使用したり、第三者に提供したりする場合などです。

③ 無許可の第三者提供

利用者から明示的な同意を得ずに個人情報を第三者に提供する行為は違反行為となります。同意を得ていても、提供する情報の範囲や提供先が同意した内容を超える場合も同様です。

④ 情報漏洩

個人情報の安全管理が不十分で情報漏洩事故が発生した場合、それは法令違反に当たります。特にセキュリティ上の脅威は増加傾向にあり、十分なセキュリティ対策が求められます。

⑤ 開示・訂正・削除への対応不備

個人情報に関する開示・訂正・利用停止・削除の請求に対応できる体制を整えていない場合、利用者の権利を侵害する可能性があります。

これらの違反行為は法的制裁だけでなく、ブランドの信頼性低下につながる可能性もあります。適切なコンプライアンス体制を整備しましょう。

GDPRとCCPA

個人情報保護については他にEUで施行されたGDPRと米国のカルフォルニア州で施行されたCCPAにも留意しなくてはならなくなりました。

「GDPR」(General Data Protection Regulation)とは、「EU一般データ保護規則」と訳されるもので、個人データの保護やその取り扱いについて詳細に定められたEU域内の各国に適用される2018年5月25日に施行された法律のことです。

GDPRで規定する個人情報は、日本の個人情報保護法と少し違います。 個人情報保護法では、住所、氏名、メールアドレスなど、個人を直接特定できる情報が対象ですが、GDPRは、IPアドレス、ウェブサイトにアクセスしたユーザーの識別などに使われる「Cookie」などのデータも含む場合があるため注意が必要です。GDPRと類似した海外の法規としてCCPA(California Consumer Privacy Act of 2018)・「カリフォルニア州消費者プライバシー法」があります。米国では、現時点においてはCCPAがあるだけで、連邦全体をカバーする個人情報保護規制はありません。

これらの法規の影響で、日本のウェブサイトも海外に居住する消費者が利用する可能性があるため、近年ではユーザーがサイトを訪れた際に、画面の下のほうにクッキーポリシーを表示してユーザーが同意するか、同意しないかを選択できるようにする必要があります。

《新聞社のサイトのページ下にポップアップ表示されているクッキーポリシーへの同意画面の例》

《クッキーポリシーの例》

そしてユーザーに同意を強要することを避けるため、ユーザーが同意しなかった場合でも問題なくウェブサイトを利用できるようにしなくてはならないことが大きな注意点です。

クッキーポリシーの設置の他にも、プライバシーポリシーのページには、企業が個人データをどのように収集、使用、保管、共有するかについて詳しく説明することと、公的機関、大規模なデータ処理を行う企業などはデータ保護オフィサー(Data Protection Officer: DPO)の連絡先を掲載することが求められています。

実際にはこれら海外の法規に対応しているのは2024年現在国内においては日本の大企業や政府機関がほとんどですが、今後は中小企業や個人事業主もこうした対応が必要になる可能性があります。

個人情報保護法を違反した場合の罰則

個人情報保護法に違反すると、企業はさまざまな法的制裁を受ける可能性があります。違反の程度や内容によって、罰則は異なりますが、主な罰則には以下のようなものがあります。

・行政指導と勧告

まず、個人情報保護委員会からの行政指導や勧告を受けることがあります。これは、違反が軽微な場合や改善が可能な場合に行われ、企業は指導に従って適切な対応を行う必要があります。

・命令と公開

行政指導に従わない場合や重大な違反が発見された場合、個人情報保護委員会は命令を発出することができます。この命令には、違反行為の停止や是正措置の実施が含まれます。命令に従わない場合、企業名を公表されることもあり、社会的信用を失う可能性があります。

・刑事罰

個人情報保護法には刑事罰も規定されており、悪質な違反には懲役刑や罰金刑が科されることがあります。具体的には、個人情報の不正利用や無断提供が行われた場合、個人情報保護委員会の命令に違反した場合などに適用されます。刑事罰の範囲としては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。

・民事責任

違反により個人情報が漏洩し、利用者に損害が発生した場合、企業は民事訴訟を起こされる可能性があります。損害賠償請求を受け、経済的な負担を強いられるだけでなく、訴訟によりさらにブランドの信頼が低下するリスクもあります。

・訴訟費用と弁護士費用

企業が訴訟を起こされた場合、訴訟費用や弁護士費用も負担しなければなりません。これらの費用は高額になることが多く、特に中小企業や個人事業主にとっては大きな負担となります。

これらの罰則を回避するためには、個人情報保護法の遵守が不可欠です。個人情報の取り扱いに関する明確なポリシーを設け、適切な管理体制を整備することで、法的リスクを軽減し、消費者の信頼を確保することができます。

個人情報保護法を違反した実際の例

個人情報保護法違反の最近の具体的な事例をいくつか挙げます:

・2014年、ベネッセで約3,504万人分の個人情報が流出し、委託先管理を含む情報管理体制の脆弱性が明らかになりました。

・2015年、日本年金機構で約125万件の年金加入者の個人情報が流出し、情報セキュリティ対策の不備が問題となりました。

・2020年、NTTドコモの「ドコモ口座」で不正利用による被害が発生し、本人確認や情報管理の不備が指摘されました。

・2021年、LINEが中国の関連会社に日本ユーザーの個人情報へのアクセスを許可していたことが明らかになり、個人情報の適切な管理が問われました。

・2022年、リクルートが運営する求人サイト「リクナビ」で、就活生の内定辞退率を予測するサービスを企業に提供し、個人の同意なく情報を利用したとして問題になりました。

・2022年、ヤフー株式会社が約2,700万件のYahoo! JAPAN ID保有者の氏名・住所情報を誤って表示させ、個人情報の適切な管理が問われました。

・2023年、KDDIが顧客約170万人分の個人情報を誤って第三者に閲覧可能な状態にしていたことが発覚し、個人情報の適切な管理が問われました。

これらの事例は、個人情報保護の重要性と、適切な管理・運用の必要性を示しています。企業は常に最新のセキュリティ対策と法令遵守に努める必要があります。

具体的には次のような対策が有効だと考えられます。

1. 技術的対策:システムセキュリティの強化、アクセス管理の徹底

《具体的な施策》
・最新のファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入
・定期的なセキュリティパッチの適用
・多要素認証の実装
・アクセス権限の厳格な管理と定期的な見直し
・データの暗号化(保存時と通信時)
・ネットワークセグメンテーションの実施
・定期的な脆弱性診断とペネトレーションテストの実施

2. 従業員教育:内部からの情報漏洩リスクの軽減

《具体的な施策》
・定期的な情報セキュリティ研修の実施
・フィッシング攻撃対策訓練の実施
・情報セキュリティポリシーの周知徹底
・インシデント報告手順の教育
・ソーシャルエンジニアリング対策の教育
・個人情報保護法の基本的な理解促進
・セキュリティ意識向上のためのキャンペーン実施

3. 委託先管理:外部委託時のセキュリティ確認と監督

《具体的な施策》
・委託先の選定基準の明確化(セキュリティ対策の評価を含む)
・委託契約書における情報セキュリティ条項の明確化
・定期的な委託先の監査やセキュリティ評価の実施
・委託先従業員に対する教育・研修の要求
・インシデント発生時の報告体制の確立
・再委託の管理と制限
・委託終了時のデータ消去手順の確認

4. 同意取得の徹底:個人情報の取得・利用時の明確な同意プロセス

《具体的な施策》
・プライバシーポリシーの明確化と定期的な更新
・オプトイン方式による明示的な同意取得
・同意内容の分かりやすい説明と表示
・同意撤回の容易な手段の提供
・利用目的の明確な説明と限定
・第三者提供に関する separate 同意の取得
・同意履歴の適切な記録と管理

5. インシデント対応計画の整備:迅速で適切な対応による被害最小化

《具体的な施策》
・インシデント対応チームの設立と役割分担の明確化
・インシデント対応手順書の作成と定期的な更新
・定期的なインシデント対応訓練の実施
・外部セキュリティ専門家との連携体制の確立
・インシデント検知・分析ツールの導入
・関係機関(個人情報保護委員会など)への報告手順の確立
・被害者への通知と補償プロセスの整備
・インシデント後の改善計画策定と実施

これらの対策を総合的に実施することで、企業は個人情報保護法を遵守し、情報セキュリティリスクを大幅に軽減することができます。また、定期的な見直しと改善を行うことで、常に変化する脅威に対応することが重要です。

まとめ

ウェブサイト運営において個人情報保護法を遵守することは、消費者の信頼を得るために不可欠です。個人情報の取得、利用、管理に関する明確な方針を設け、プライバシーポリシーやクッキーポリシーを適切に設定することが重要です。さらに、EUのGDPRや米国のCCPAなど、国際的な法規制にも留意し、最新の情報を常に把握して対応することが求められます。これにより、法的リスクを軽減し、長期的なビジネスの成功につなげることが可能になります。

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